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キャラクターの著作権管理はしっかりと-PR活動で失敗しないために

ChatGPT等の生成AIが普及しつつある現在、
誰でも簡単にPR活動を行うことができる環境にあるといえます。

PR活動では、
キャッチコピーやキャラクター、イラスト、写真などが多用されますが、
これらの著作権管理はしっかりとされていますか?

今回は、PR活動で失敗しないためにも、著作権管理の重要性について解説していきます。

営業部に所属している方はもちろん、
PR活動等で使用するキャラクターなどを制作するクリエイターの方にも、ぜひとも、一読していただければ幸いです。

著作権とは、思想・感情を創作的に表現したものです!

著作権制度は、作品を創り出した創作者の権利を保護するための制度です。

文学作品、音楽、絵画、写真、ソフトウェアなど、
思想や感情を創作的に表現したあらゆる形の作品
著作権法による保護の対象となります。

今、話題になっています、
AIを使って生成されたAI生成物に対しては、
AIは人間ではなく、思想・感情をもたず、
思想または感情を創作的に表現していないため、
著作権権の保護は受けられない
とするのが法的な解釈として自然です。

著作権がかかわるPR活動の素材

PR活動においては、
キャッチコピーキャラクター・イラスト・写真など
多種多様な創作物が使用されます。

これらの素材は、
著作権がかかわるものとなります。

また、
動画・音楽、音楽を構成する歌詞や曲・ダンスの振付なども、
PR活動で使われますが、
これらの素材も、
著作権が関わってきます。

たとえば、
企業がキャンペーンのために特定のキャラクターを用いる場合、
キャラクターの創作者が従業員でなければ
そのキャラクターの著作権所有者から使用許可を得るか
著作権を買い取る必要があるでしょう。

また、
ソーシャルメディアでの投稿や広告キャンペーンに使用する写真やイラストにも、
同様の配慮が必要です。

従業員が創作した著作物は会社が権利を有します

会社内で、上司からの命令等で、
会社で使用するためにイラストやキャラクターなどを創作することはあるでしょう。

この場合を、一般的に『職務著作』といい、
原則、著作者は会社ということになります。

ただし、
作成時点において、契約、勤務規則その他に別段の定めがあるのであれば、
その内容に従うことになります。

第三者が作成した著作物については著作権の買い取りが基本

規模が大きいPR活動においては、
キャラクターや写真・動画などについては、
社外の業者に作成することが一般的だと思われます。

この場合、
そのキャラクターや写真・動画の著作権は
その業者が持つ
ことになります。

もし、
使用している素材について、
著作権を買い取らず、
使用許諾を得ていないのであれば、
その業者から著作権侵害として訴えられるリスクが残ってしまいます。

最近、
個人のイラストレーターによる著作権トラブルの相談をよく受けるのですが、
契約書の中に、著作権に関する条項がなく、
業者に発注して、お金も支払っているのだから、権利は会社に帰属するのが当然だろう
という誤った認識で契約を締結していることがほとんどです。

このようなトラブルを避けるために、
業者が著作物を引き渡すときに、著作権を譲渡すること
または、最低でも
業者から著作物を引き渡した時点で、著作物の使用許諾を行うこと
契約書に盛り込むようにしてください。

また、特に著作権侵害のリスクが高い素材に関しては、
専門家による法的なアドバイスを得ることが賢明です。

PR活動において著作権管理はとても重要となります

著作権管理は、PR活動の成功を左右する要素の一つです。

適切な管理が行われない場合、
法的な問題が発生し、企業の信頼性やブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。

著作権を尊重し、適法に素材を使用することは、
企業の社会的責任の一環とも言えます。

著作権侵害のリスクとその影響

著作権侵害は、
故意であれ無知からであれ、
深刻な結果を招きます。

侵害が発覚した場合、訴訟に発展することがあり、
高額な賠償金や訴訟費用を支払わなければならないことがあります。

また、
企業の評判が損なわれ、
消費者やビジネスパートナーとの信頼関係が失われることもあります。

さらに、
侵害した素材を使用したPRキャンペーンや広告を中止しなければならなくなることで、
プロジェクトの遅延追加の費用が発生する可能性もあります。

正しい著作権管理のためのガイドライン

著作権管理を適切に行うためには、以下のガイドラインを守ることが重要です。

  • 著作権の買い取り又は使用許諾の取得
    利用するすべての素材について、著作権者から著作権を買い取るか使用許諾を取得します。
  • 著作権表示の確認
    素材を使用する際には、必要に応じて著作権表示を行います。
  • 著作権法の知識
    著作権法に関する基本的な知識を身につけ、常に最新の情報を把握しておきます。
  • 専門家の利用
    不明点がある場合は、法律の専門家に相談することで、リスクを回避します。

クリエイティブな活動と著作権法のバランス

著作権法は一見すると、創作者を過剰に保護しているようにも見えますが、
一方では、
文化的な発展や創造性の促進も重視しています。

著作権法には、
フェアユース(公正な使用)パブリックドメイン(著作権の保護期間が終了して自由に利用できる状態)といった概念があり、
これらを適切に利用することで、
クリエイティブな活動と著作権法のバランスを取ることができます。

フェアユースの原則を理解し、適用することで、
著作権保護対象の素材を合法的に使用し、
新たな創作活動につなげることが可能です。

著作権法は、創作を制限するものではなく、クリエイテイティブな活動を促進することに重点を置いています。

著作権法を正しく理解し、適切な対応をとることは、
PR活動の成功の不可欠な要素といえるでしょう。

PR活動における著作権問題のトラブル事例

有名なキャラクターの衣装の模様に類似した背景を横断幕に使用して炎上

ある商社で使用している衛生標語を記載した横断幕がSNSにアップして炎上に近い状態になったと相談にこられました。

よく見ると、背景が、有名なキャラクターの衣装の模様であり、
従業員が写真をアップしたことにより、炎上したというものです。

なお、その衣装の模様は独特なものではなく、昔からある模様ではあるものの、
特に20代ではアニメを通じて知っている模様です。

著作権は、あくまでも、完成した創作物に対して与えられるものであり、
その創作物を構成するパーツに著作権は発生しません。

つまり、
この炎上は、著作権法を正しく理解していない者による
誤った批判ではありますが、
企業イメージが悪くなることから、横断幕を取り下げる方針をとることとなりました。

この事例からもわかるように、
昨今では、著作権についての意識は高いものの、
正しい知識を持たないまま、SNS等で発言
する方も多くいます。

炎上リスクを避けるためにも、
デザインの出所についても確認しておいた方がよいでしょう。

また、従業員にSNSでの情報発信について気をつけるように教育することも重要です。

イベント開催で有名な曲を使用しようとしたことにより企業イメージが低下

ある企業では、定期的にアマチュアのミュージシャンを呼んでイベントを開催していたところ、
たまたま、そのイベントに顧客として参加している市長から、
市として大きなイベントをやりたいので任せたい
という依頼を受け、そのイベントを実施することになりました。

せっかく市から受注したものですから、
大々的に実施しようと大物ミュージシャンも含め声をかけて、
あと数日で実施という段階で、
そのイベントの目玉に、参加者も含めて1曲一緒に歌うということをやりたい
と相談に来られました。

その曲は、誰もが知っている曲で、
有名なアーティストが著作権を持っているのですが、
所属事務所の著作権管理が厳しく、
実際に実施した場合には、損害賠償の請求が行く可能性が高い
ことをアドバイスしました。

しかし、
このアドバイスは活かされることなく、
この目玉は前日まで実施される予定でしたが、
別のアーティストから、この目玉は問題になることを指摘され、
最終的には、実施されることなくイベントを終了することになりました。

この背景を知った別の企業から、
専門家の意見を尊重せずにイベントを進め、
法律の専門家でない素人のアーティストの意見を受け入れる経営者は信用できないと
取引停止の事態に陥ったとのことです。

この事例では、
著作権の重要性を認識していないだけでなく、
専門家の意見を尊重するというビジネスの基本を認識していなかったために、
生じてしまったトラブルです。

著作権の基本的な情報・知見は、インターネット上で容易に入手することが可能です。
初心者向けは、比較的容易な内容ですので、情報を押さえておくことをおすすめします。

また、わからないことについて、専門家に質問することは悪いことではありません。
ただし、質問をしている以上、専門家からの回答は、その内容について尊重するようにしましょう。

その専門家は、このトラブルについては口外していませんでしたが、
就業時間終了後の従業員の雑談がこのような事態を引き起こしていました。

この点についても問題があります。
従業員には、社内のこと、仕事のことを外部に漏洩することによるリスクを教育しておき、
就業時間終了後の従業員の雑談についても、注意が必要であることを理解させておくことも必要でしょう。

PR活動での著作権トラブルを避けるための対策

著作権トラブルを避けるためには、以下の対策を講じることが重要です。

  • 素材の著作権状況を確認・必要な手続を行う
    まずは、誰が、いつ、著作権を発生させたかを明確にします。
    必要に応じて、著作権の買い取り・使用許諾の手続きを行います。
  • フリー素材・パブリックドメインの素材を活用する
    パブリックドメインに属するキャラクターや、フェアユースの原則に基づいて利用可能なキャラクターの要素を使用することは、
    新しいキャラクター制作において有用な戦略となる場合があります。
    パブリックドメインは、著作権保護期間が終了した作品が含まれ、誰でも自由に使用できます。
    一方、フェアユースは、教育目的や批評、パロディなど特定の条件下で、例外的に、著作権で保護された作品を許可なく使用できます。
  • 専門家の活用
    著作権に関する専門的な知識を持つ弁護士や弁理士に定期的に相談することも、リスク管理には欠かせません。
    専門家の活用は不可欠です。

キャラクター制作時の注意点

キャラクター制作は、ブランドやプロダクトを象徴する重要な要素です。

魅力的なキャラクターは、ターゲットオーディエンスとの強い結びつきを生み出し、記憶に残るPR活動となります。

しかし、そのプロセスには、著作権に関するいくつかの重要な注意点が伴います。

  • オリジナリティを高め、著作権を確認する
    キャラクター制作では、独創性(オリジナリティ)を高めることが基本となります。
    創作されたキャラクターが他の既存のキャラクターと類似していないことを確認することは、著作権トラブルを避けるために不可欠です。
    ※他人の作品に依拠せず創作したが、偶然、既存のキャラクターと類似していても、著作権侵害として扱われませんが、
    SNS等による炎上リスクを避けるためにも、類似しているか否かの確認は必要です。
  • パブリックドメインとフェアユースの理解
    パブリックドメインに属するキャラクターや、フェアユースの原則に基づいて利用可能なキャラクターの要素を使用することは、新しいキャラクター制作において有用な戦略となる場合があります。
    パブリックドメインは、著作権保護期間が終了した作品が含まれ、誰でも自由に使用できます。
    一方、フェアユースは、教育目的や批評、パロディなど特定の条件下で、例外的に、著作権で保護された作品を許可なく使用できます。
  • 類似性のチェックと独自性の確保
    キャラクターの類似性をチェックし、独自性を確保するためには、詳細な調査が必要です。
    今は、Googleの画像検索で、画像ファイルを用いて類似のキャラクターがあるかを調べることができます。
    また、業界内のトレンドもあわせて調べることもできますので、ヒットするキャラクターを創作することも可能でしょう。
    このような確認を経て、独自のキャラクターを制作することは、著作権の観点からだけでなく、ブランドの独自性と競争力を高める上でも重要です。

著作権等の知的財産の相談は弁理士にお任せしましょう

知的財産権制度は複雑な制度であり、専門的な知識が必要となります。

特許庁や文部科学省などのウェブサイトでは、知的財産権制度に関する情報が提供されていますが、個別の案件について具体的なアドバイスを受けることはできません。

そこで、知的財産権に関するご相談は、弁理士に相談することをおすすめします。

弁理士は、知的財産に関する専門家として、特許出願や商標登録などの手続きを代理で行うことができる国家資格者です。

また、弁理士は、企業や個人に対して、知的財産権に関するコンサルティング業務も行っています。

知的財産権に関するご相談は、お気軽に弁理士にご相談ください。

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