知的財産

SNSアップしたら特許が取れない?~特許要件-知財入門講座(6)

新しい技術的なアイデアを特許権にするためには、特許出願を行うことが必要です。

しかし、技術的なアイデアが完成したからといって、直ちに、特許出願を行ってはいけません。

特許出願前に事前に調査・検討しておくべき事項として、最低でも次の5つが挙げられます。

  • 発明に該当するか
  • 特許出願すべき発明であるか(営業秘密として管理すべき発明か)
  • 同一・類似技術が存在するか
  • 発明者・特許出願人は誰か
  • 明細書・特許請求の範囲をどのように記述するべきか

知財入門講座第5回では、特許出願前に調査・検討すべき事項の一つである発明の該当性について説明しました。

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ビジネスモデルを発明に?!~発明の4つの要件-知財入門講座(5)

2024/3/30  

新しい技術的なアイデアを特許権にするためには、特許出願を行うことが必要です。 しかし、技術的なアイデ ...

今回は、特許出願前に調査・検討すべき事項のうち、特許出願すべき発明(営業秘密として管理すべき発明)と、同一・類似技術の存在について解説していきます。

営業秘密として管理すべき発明は特許出願しないほうがよいです

特許出願から特許権取得までの流れ

特許出願を行った場合、特許出願の日から1年6月後には、出願された内容が公開されます。
この公開を、出願公開と言います。

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発明を特許にするには~特許の申請から消滅まで-知財入門講座(4)

2024/2/23  

技術的なアイデアである発明を、権利として保護するためには、特許制度を利用することを第一に考える必要が ...

出願公開で公開される内容は、
願書(特許願)の他、
明細書特許請求の範囲図面要約書
そして、その出願について、提出した書類すべてです。

出願公開された後に、その出願について提出した書類も公開されます。

したがって、特許出願を行うことで秘密を保つことは不可能となります。

秘密にすべきものについては、
特許出願をせず、営業秘密として管理すべきでしょう。

特許出願を行ったが、秘密として管理する(方針変更)ときの条件と方法

出願公開は、出願の日から1年6月の時点で特許庁に係属している出願について公開されるようになっています。

しかし、出願公開公報は、出願した時点で自動的に作られていくものではなく、
技術コードを付与したり、
要約書の記述が方式にあっていない場合は、要約書の修正文を作成したりする必要がありますので、
実務においては、出願の日から1年4月後くらいから、公開の準備に向けて動き出します。

このため、実際は、保険をみて出願の日から1年2月の時点で特許庁に係属している出願について公開されると考えてよいかと思います。

そこで、特許出願を行ったが、今後、秘密として管理したいというときには、
出願の日から1年2月までに出願を取り下げる
(ただし、特許権の設定登録がされていないこと)
という措置を取ればよいということになります。

特許出願を行う前に先行技術調査を行うことをおすすめします

特許権を取得するためには、特許要件を満たす必要があります。

特許要件は様々ですが、代表的なものとして、次のつを挙げておきます。

  • 新規性(その発明は、新しいか否か)
  • 進歩性(その発明は、エンジニアにとって、出願時に存在する技術力から容易に思いつくものでないか否か)
  • 産業上の利用可能性(知財入門講座第5回にて解説済み)
  • 先願(誰よりも早く出願したか)
  • 明細書・特許請求の範囲の適正記載

このうち、ここでは、新規性、進歩性、先願について解説していきます。

先行技術調査によって新規性の有無を判断しましょう

新規性は、その発明が新しいこと
つまり、
出願の時点において、誰にも知られていないこと
を意味します。

産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
1 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
2 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
3 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

このため、
テレビや新聞、雑誌記事で取り上げられたり、インターネットにて公開された技術は、
新規性がないものとして、特許を受けることはできません。

学会発表や商品やサービスとして販売する行為を、特許出願前に行った場合も、
同様です。

つまり、
秘密保持義務のない第三者に知られるような状態に置いた時点で、
新規性がないものとして扱われ

その後に特許出願をしても、特許権を取得することができなくなります。

新規性がないという理由で拒絶される場合の殆どは、
すでに特許出願され、出願公開されていることを根拠とするものです。

このため、
特許出願の前に先行技術調査によって、同一技術について公開されていないことを確認すること
が、コスト削減という意味で重要となります。

すでに公開してしまったが、特許を取りたい場合には新規性喪失の例外の適用を受ける必要があります

すでに、
テレビや新聞、雑誌記事で取り上げられたり、インターネットにて公開された技術
学会発表や商品やサービスとして販売する行為を、特許出願前に行った場合には、
新規性がないものとして、特許を受けることはできません。

とはいうものの、
特に中小企業やスタートアップ企業にとっては、
特許出願よりも、商品やサービスを提供して、その売れ行き動向を見てから、
特許出願をしたい

という思いも理解できます。

また、
大学や研究機関では、
特許出願よりも学会発表や、論文発表に重点を置かれる文化がある

ことも理解できます。

このように、
秘密保持義務のない第三者に知られるような状態に置いた時点で、新規性がないものとして
一律に扱うのは好ましくないケースも多くあります。

そこで、自ら、秘密保持義務のない第三者に知られるような状態に置いた場合には、
その日から1年以内に特許出願を行い、
出願と同時に、新規性喪失の例外の適用を受ける旨を表記するとともに、
出願の日から30日以内に、その証明書を提出する
ことで、
自らの行為によって、新規性を喪失しなかったものとして扱われるようにすることができます。

特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明が前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を特許出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

先行技術調査に費用かけるなら、調査せずに特許出願をするのも有り

先行技術調査を弁理士に依頼するとき、事務所によっては10万円以上請求されるケースがあります。

  • 依頼しようとする弁理士の調査料が高い
  • 調査を丁寧に行うため、調査に時間と労力がかかる
  • 技術が複雑で、調査に時間と労力がかかる
  • 無料のデータベース(J PlatPat)での調査では不足し、有料のデータベースを利用する方が適切な技術分野にあたる

特許権を取得することを目標に、特許出願をする場合には、
出願審査請求を行い、審査官による審査を受ける必要があります。

このため、
特許出願のための先行技術調査の場合には、調査会社や依頼する弁理士に見積書を出してもらい
簡易調査で10万円超えるような場合には、
先行技術調査を行わず、
特許出願をして、審査官に審査してもらう
ほうがお得です!

調査に費用をかけるのではなく、
権利取得のための費用や、製品・サービス開発に投資するようにしましょう。

進歩性の判断は難しいので、先行技術調査では考えない方がマシです

進歩性は、
その発明が、エンジニアにとって、出願時に存在する技術力から容易に思いつくものでないこと
を意味すると考えるとよいでしょう。

特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

容易に思いつくものであるか否かは、
主となる引用文献を探し出し、そこから、出願しようとする発明に容易に思いつくかどうかについての動機付けを試みる
ことによって判断されます。

実際やってみると、
専門家である弁理士でも難しい部分があり、
先行技術調査から進歩性の有無までを判断することはとても難しく、
精度を高めるには費用と時間を要します。

このため、
先行技術調査によって、進歩性の有無までを判断しようとはせず、
特許出願をして、審査官に審査してもらう
ほうがお得です!

特許出願は早いもの勝ち!時間との勝負です!

特許出願は、早いもの勝ちです!

同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。

同じ発明について、2件以上出願があった場合には、
最も先に出願した特許出願人のみが、
その発明について特許を受けることができます。

二番目以降の出願については、
特許を受けることはできません。

これを先願主義と言います。

このため、特許出願は時間との勝負です。

できるだけ早く出願するように心がけてください。

同日に出願された場合は、協議が求められます

特許出願は、早いもの勝ちです!

では、同日に出願された場合には
どうなるのでしょうか?

同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。

同じ発明について、同日に2件以上出願があった場合には、
特許庁長官による協議指令が発行されます。

協議により、特許出願人を選定した場合には、
その特許出願人のみが、特許を受けることができます。

協議が成立しなかったり、協議をすることができない場合には、
その発明については、誰も特許を受けることができません。

知的財産権制度に関するご相談は弁理士にきくのがBEST

知的財産権制度は複雑な制度であり、専門的な知識が必要となります。

特許庁や文部科学省などのウェブサイトでは、知的財産権制度に関する情報が提供されていますが、個別の案件について具体的なアドバイスを受けることはできません。

そこで、知的財産権に関するご相談は、弁理士に相談することをおすすめします。

弁理士は、知的財産に関する専門家として、特許出願や商標登録などの手続きを代理で行うことができる国家資格者です。

また、弁理士は、企業や個人に対して、知的財産権に関するコンサルティング業務も行っています。

知的財産権に関するご相談は、お気軽に弁理士にご相談ください。

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2024/2/20  

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