知的財産

発明を特許にするには~特許の申請から消滅まで-知財入門講座(4)

技術的なアイデアである発明を、権利として保護するためには、特許制度を利用することを第一に考える必要があります。
知財入門講座第3回では、特許制度の主な特徴として、次の4つを紹介し、簡単に説明しました。

  • 特許出願(特許の申請)が必要
  • 出願審査請求が別途必要
  • 特許するか否かを審査官が審査
  • 特許権の存続期間は、原則、出願の日から20年

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特許制度の概要-特許制度の目指すところ-知財入門講座(3)

2024/2/22  

新たな商品を開発したり、産学連携や、異業種連携を進めたりする中で、知的財産権の問題は避けて通れないも ...

知財入門講座第4回では、具体的に特許出願から、特許権の消滅までの流れについて、もう少し詳しく解説していきます。

特許出願の流れは入試・入学のための流れとかなり近い

特許出願の手続きの流れを説明する際に、入試・入学の手続きの流れとかなり近いことから、比較して説明される弁理士も多くいます。

大学入学と特許取得手続の対比

ある大学に入学したいと考えた場合
まず、その大学に願書を提出します。
その際に、受験料を支払うことになるでしょう。

そして、入学試験日に入学試験を受け
試験に合格しなければなりません。

試験に合格した後に、入学金や授業料を納付すると、
大学に入学でき、大学生となることができます。

特許取得の大まかな流れはこれと同じで、
特許を取得したいと考えた場合は、
まず、特許庁に、発明の内容を記載した書類を提出する必要があります。
これを特許出願といいます。

そして、審査を受けるために、出願審査請求を行い、審査の実費を支払います。

入試に相当するものが実体審査で、
特許庁の審査官が、発明の内容を審査します。
その結果、合格と認めたものが、特許査定となります。

特許査定が届きましたら、特許料(最低でも、第1年~第3年までの特許料を一括)を納付すると、
特許権が与えられ、特許権者となることができます。

特許出願から特許権成立までの具体的な手続きの流れ

大まかな流れについて解説しましたので、もう少し詳しく手続きを見ていきます。

特許出願がなければ特許権の付与はありえない

特許権は、特許庁において、特許権の設定登録を行うことで発生します。

その際には、特許庁が発明の内容をしっかり把握しておく必要があるのですが、
テレパシーが使えるわけではありませんので、
紙媒体や電子媒体を使って、特許庁に発明の内容を知ってもらう必要があります。

そのため、特許出願手続を行います。

方式審査

出願した内容は、早期に取り下げ等なされない限り、原則公開されます。

また、特許庁の審査官により、発明の内容が審査されます。

このように、出願内容に触れる者がいる以上、
自分勝手な記述は許されません。

必要な事項が全て埋められているか、
足りない書類はないか、
料金が適切に納められているか、
などをチェックしていきます。

このようなチェックを方式審査と言います。

出願公開

出願した内容は、早期に取り下げ等なされない限り、特許出願の日から1年6月後に、原則公開されます。

これは、特許制度の根幹である、
新規な発明の『公開』の代償として、特許権という独占的な権利を与える
この公開するためのものとして出願公開されるというものです。

なお、この出願公開により、模倣等がされた場合には、
その出願公開された発明について特許権が取得された後に、一定条件のもと、補償金を請求することができます。

出願審査請求

特許権を取得するためには、特許庁審査官による審査を受ける必要があります。

しかし、毎年20万件を超える特許出願がされている現状、
全件審査は不可能です。

また、審査のための人件費や、データベース使用料など、
審査に係る費用は無料ではありません

そこで、出願人が、どうしても特許を受けたいとする出願に限定して審査するとともに、
審査に係る実費を出願人に負担してもらうために、
出願審査請求制度が設けられています。

出願審査請求は、特許出願の日から3年以内に行うことが必要となります。
例外的な取り扱いはありますが、
所定期間内に審査請求をしなければ、出願が取り下げられたものとして扱われ
特許権の取得ができなくなりますので注意が必要です。

実体審査

出願審査請求がなされますと、
特許庁審査官は、出願時に提出された書類をもとに、特許してよいかどうかをチェックします。

審査では、様々な事項がチェックされるのですが、
基本的には、
その発明に特許権を与えることで、産業の発達に寄与することができるか
の視点で、チェックされます。

拒絶理由通知書の発送と意見書・手続補正書の提出

審査官による審査の結果、特許することができないと判断した場合であっても、直ちに
特許しない
と結論づけるのではなく、
特許することができない理由を提示して、
出願人に反論の機会を与えたり、書類を書き直したりする機会を与えるようにしています。

この書類を拒絶理由通知書といい、
この拒絶理由通知書に指定された期間内に、意見書を提出したり、手続補正書により出願書類を修正したりすることができます。

意見書は、拒絶理由通知書に記載された内容に対して、反論する場合に提出するものです。

手続補正書は、明細書や特許請求の範囲等、特許出願時に提出した書類を修正(これを「補正」と言います。)するときに提出するものです。

なお、手続補正書と合わせて、意見書を提出して、補正により特許できる理由を説明することもできます。

意見書や手続補正書の提出は、指定された期間内に提出し、
遅れそうな場合は、早めに期間延長請求をしておくことをおすすめします。

期間経過後の手続補正書の提出は認められませんので、注意が必要です。

特許査定と特許料の納付

審査官による審査の結果、特許できると判断した場合には、
特許査定
が届きます。

また、一度、拒絶理由通知が届いたものの、
意見書の提出や手続補正書の提出により、特許できると判断できる場合にも、
特許査定
が届きます。

特許査定が届きましたら、特許査定が届いた日から30日以内に、特許料を納付します。
このときに納付する特許料は、第1年から第3年までの3年分の特許料となります。

特許権の設定登録・特許証・特許公報の発行

特許料が納付されますと、特許庁にて、特許権の設定登録を行います

特許権の設定登録がされた時点で特許権が発生します。

そして、特許権が発生したことを世間に公表する特許公報が発行されるとともに、
特許権者には、特許証が送付されます。

特許公報は、特許権が設定された内容が記載されており、極めて重要な公報となります。

特許証は、発明者を称えるために発行されるものであり、
特許証が権利の有無を証明する書面ではないことに注意しましょう。

権利の有無は、特許原簿という書類で確認することができます。

拒絶査定

審査官による審査の結果、特許できないため、拒絶理由通知書を送付したものの、
意見書・手続補正書の提出によっても、やはり特許できない場合には、
拒絶査定
が発送されます。

拒絶査定は、審査の段階での最終処分であり、
これに不服がある場合には、拒絶査定が届いた日から3月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます。
なお、拒絶査定不服審判の請求と同時に、手続補正書を提出することも可能です。

特許権が消滅する場合

特許権は、特許出願の日から20年で消滅します。

これは、存続期間満了による消滅を意味しますが、
これ以外にも、特許権が消滅する場合があります。

  • 毎年納付すべき特許料を納付しなかった場合
  • 特許異議申立てにより、特許が取り消された場合
  • 特許無効審判により、特許が無効とされた場合
  • 特許権を放棄した場合
  • 特許権者が死亡や倒産等し、相続人等が存在しない場合

特許権は、審査官による審査を経て、権利化されていますが、
人の手によるところもあり、誤って登録されることもあります

そのための是正措置として、特許異議申立て制度や、特許無効審判制度があります。
特許権が設定されたとしても、絶対的なものではない点に注意しましょう。

知的財産権制度に関するご相談は弁理士にきくのがBEST

知的財産権制度は複雑な制度であり、専門的な知識が必要となります。

特許庁や文部科学省などのウェブサイトでは、知的財産権制度に関する情報が提供されていますが、個別の案件について具体的なアドバイスを受けることはできません。

そこで、知的財産権に関するご相談は、弁理士に相談することをおすすめします。

弁理士は、知的財産に関する専門家として、特許出願や商標登録などの手続きを代理で行うことができる国家資格者です。

また、弁理士は、企業や個人に対して、知的財産権に関するコンサルティング業務も行っています。

知的財産権に関するご相談は、お気軽に弁理士にご相談ください。

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