新たな商品を開発したり、産学連携や、異業種連携を進めたりする中で、
知的財産権の問題は避けて通れないものであることは、知財入門講座第2回において、説明しました。
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知的財産権の種類と主な特徴-知財入門講座(2)
2024/2/20
ビジネスを進めていく上で、知的財産権に関する法的な取り扱い・リスクについて把握すべきであることを知財 ...
特許制度は、技術的なアイデアを保護するものですので、技術に携わる方は当然押さえておくべき知識と言えます。
しかし、ものづくりの世界だけが特許と関わっているかというとそうではありません。
例えば、物を販売する場合でも、特許権侵害として訴えられることもあり、
どのような業界においても、特許の問題がついてくることもあります。
そこで、「知財入門講座」第3回は、特許制度の概要を説明するとともに、特許制度の目指すところについても解説していきます。
目次
特許は、新規な技術的アイデアに関する権利
特許制度をひとことで説明
特許制度は、新しい技術を公開した者に対し、その代償として一定の期間、一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与し、他方、第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与えるものである。
この記述は、特許法のバイブルともいえる書籍「工業所有権法逐条解説」(俗にいう「青本」)に記載されているものです。
つまり、
新しい技術について、特許権を与えますよ!
その代わりに、その新しい技術について公開し、利用できるようにしましょう
ということです。
このため、新しいと認められない技術について、特許権が与えられることはありません。
また、公開されない技術についても、特許権が与えられることはありません。
特許制度では、発明の保護と利用の絶妙なバランスをとっている
特許法には、特許制度を設けることの目的が規定されています。
特許法第1条
この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
特許法の究極目的は、
産業の発達に寄与すること。
この目的を達成するために、
発明の保護と利用のバランスをとる
ようにしています。
発明の保護、つまり
発明を権利者に一定期間の独占権を与えること
発明を独占することで、
発明が完成するまでに投資した開発費を、独占している期間内に回収するだけでなく、
開発費以上の利益を獲得することができます。
また、自分の発明であることを対外的にアピールすることで、発明者のモチベーションも向上する
このように金銭的な面だけでなく、精神的な面も含めて、
発明者の発明創作意欲が高めるための方策をとることにより、さらなる発明が促されるでしょう。
ただし、発明を独占できるようにする一方、
権利者には、他人に、その発明を利用する機会を与えるようにしています。
具体的には、
独占技術を公開することにより、第三者がその独占技術の欠点に気づき、改良することで、新たな技術が生まれることがあるでしょう。
また、
独占技術について、ライセンスを受けて、発明を利用して製品やサービスを作り出すこともできることもあるでしょう。
さらに、特許権は、一定期間の独占権ですので、
その期間が経過した場合には、誰もが自由に、その技術を利用することができます。
「発明の保護」と「発明の利用」のバランスをとることにより
産業の発達に寄与することができる
そのように考えて、特許制度が成立しているといえるでしょう。
特許制度では、産業の発達を究極目標としている
特許法の目的にあるように、
産業の発達に寄与すること
を究極目的としています。
つまり、
産業の発達に寄与しないものについては特許権は与えられない
ことを意味します。
例えば、
すでに知られている技術について、特許権を与えたときは、
産業の発達に役に立つわけではなく、逆に、産業の発達を阻害するおそれがある
から、すでに知られている技術については特許権が与えられません。
他にも、個人的な使用にとどまり、工業的にも産業的にもビジネスにならないものについても、
産業の発達に役立つわけではありませんので、
たとえ技術的な事項であったとしても、特許権が与えられることはありません。
産業の発達に役立つものでも特許が与えられないものがある
特許法の究極目的は、
産業の発達に寄与すること
です。
しかし、産業の発達に寄与するものであっても、
政策的に特許が与えられないものも存在します。
産業の発達に役立つものであっても特許が与えられない発明
- 公序良俗違反に該当する発明
- 人間を手術・治療・診断する方法の発明
- 公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明
(厳密には、特許が与えられないのではなく、特許権が留保されるものです)
公序良俗違反に該当するものについては、特許を与えるべきでないのはなんとなくわかると思います。
人間を手術・治療・診断する方法の発明については、
仮に、特許が与えられた場合には、現に医療行為に当たろうとする医師にとって、
これから自分が行おうとしていることが特許の対象になっているのではないか、
などということを心配することになり、
円滑な医療行為の妨げになってしまいます。
医療行為に当たる医師をこのような状況に追い込む制度は、医療行為というものの事柄の性質上、著しく不当です。
しかし、現在の特許制度では、このような結果を防ぐための措置を講じていないことから、
医療行為そのものに対しては特許性を認めていません。
公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明については、
経済安全保障の観点から、特許権の付与が留保されています。
特許制度の概要
特許制度の主な特徴
- 特許出願(特許の申請)が必要
- 出願審査請求が別途必要
- 特許するか否かを審査官が審査
- 特許権の存続期間は、原則、出願の日から20年
特許出願(特許の申請)が必要
特許権を取得するためには、特許庁(正確には、特許庁長官)に、特許出願(俗に言う特許の申請)を行う必要があります。
特許出願をしないかぎり、権利を付与する特許庁は、その発明の存在を知る術がないからです。
なお、特許出願を行う場合には、特許庁に出願手数料は、14,000円(令和6年2月現在)です。
料金は変動することがありますので、その都度、特許庁のWebサイトを確認するとよいでしょう。
出願審査請求が別途必要
特許出願(特許の申請)をしただけでは、特許庁では、特許権を付与してもらうことはできません。
特許権を付与してもらうためには、審査官に、発明の内容について審査を受ける必要があります。
しかし、特許出願件数が年間20万件を超えることから、全件審査にしますと、審査官の負担が重くなり、いつまでたっても、特許権が付与されないという事態に陥ります。
また、審査には、特許調査から、最終処分を下すまでの間に、実費が発生します。
その実費を、特許出願を行った方(権利を取得する者)に負担していただくようにするほうが合理的です。
このような事情から、特許権を与えてもらうために、審査の実費を納付する出願審査請求を行う必要があります。
特許するか否かを審査官が審査
特許権を付与してもらうためには、審査官に、発明の内容について審査してもらう必要があります。
その発明が、産業の発達に役立つものであるかどうかをチェックし、
役立つものだけ、特許権という強力な権利が与えられるようになっています。
なお、審査官による審査の結果、特許を与えることができないと判断されたものについては、
いきなり、特許を与えないと結論付けるのではなく、
与えない理由を示したうえで、反論したり、特許出願の際に提出した書類を書き換えたりするチャンスが与えられます。
特許権の存続期間は、原則、特許出願の日から20年
特許権の存続期間は、特許出願を行った日から20年となっております。
しかし、特許権の設定登録がされてからは何もしなくても、特許権が存続するわけではなく、
登録日を基準に毎年特許料を支払うことにより、存続期間満了日まで権利を維持する点に注意が必要です。
知的財産権制度に関するご相談は弁理士にきくのがBEST
知的財産権制度は複雑な制度であり、専門的な知識が必要となります。
特許庁や文部科学省などのウェブサイトでは、知的財産権制度に関する情報が提供されていますが、個別の案件について具体的なアドバイスを受けることはできません。
そこで、知的財産権に関するご相談は、弁理士に相談することをおすすめします。
弁理士は、知的財産に関する専門家として、特許出願や商標登録などの手続きを代理で行うことができる国家資格者です。
また、弁理士は、企業や個人に対して、知的財産権に関するコンサルティング業務も行っています。
知的財産権に関するご相談は、お気軽に弁理士にご相談ください。
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