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AI生成物の発明者は誰?~発明者と特許出願人-知財入門講座(7)

新しい技術的なアイデアを特許権にするためには、特許出願を行うことが必要です。

しかし、技術的なアイデアが完成したからといって、直ちに、特許出願を行ってはいけません。

特許出願前に事前に調査・検討しておくべき事項として、最低でも次の5つが挙げられます。

  • 発明に該当するか
  • 特許出願すべき発明であるか(営業秘密として管理すべき発明か)
  • 同一・類似技術が存在するか
  • 発明者・特許出願人は誰か
  • 明細書・特許請求の範囲をどのように記述するべきか

知財入門講座第6回では、特許出願前に調査・検討すべき事項のうち、特許出願すべき発明であるか否かについて、そして、同一・類似技術が存在するか、つまり、特許要件のうち、新規性・進歩性・先願ついて説明しました。

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2024/2/28  

新しい技術的なアイデアを特許権にするためには、特許出願を行うことが必要です。 しかし、技術的なアイデ ...

知財入門講座第7回では、発明者・特許出願人について解説していきます。

発明者は発明の完成に実質的に寄与しているか否かで判断します

特許出願を行う際に、最初に悩ますところは、
発明者を誰かにするかを決定すること
です。

発明者を具体的に定義した条文の文言や判例はありませんが、
基本的には、
発明を完成させる創作活動を実際に行った者
が発明者となります。

しかし、現在の研究活動は、
複数の専門家から構成されるチームによる共同作業で行われることが一般的です。

そこで、我が国での発明者の選定の際には、次の基準で定めるとよいでしょう。

その発明の成立に関与した者から、
単なる補助者・単なる管理者・単なる後援者・単なる製作者・依頼者などを外し
残ったすべての人を発明者とする

なお、米国での発明者の基準とは異なります。

その発明の特徴的部分について誰が着想したか

米国での発明者選定はかなり厳格であり、
以前の米国では、発明者のみが特許出願ができる制度であったことが要因です。

発明者には特許を受ける権利が与えられます

発明の完成直後、発明者に「特許を受ける権利」が発生します。

特許出願は、この「特許を受ける権利」に基づいて行うことができます。

ただ、
特許を受ける権利は、譲渡することができますので、
発明者が、自分で特許出願を行うこともできれば、
特許を受ける権利を他人に譲渡し、譲渡を受けた者が特許出願を行うこともできます

発明者の中には、
特許を受ける権利を譲渡しておきながら、特許権について何らかの利権がある
誤解する方もいます。

特許を受ける権利を他人に譲渡した場合、
出願人と発明者は別になります。

この場合、
発明者は、発明したという栄誉だけを持ち、特許権についての権限は何も持ちません。
特許権についての権限は、特許権者が持ちます。

特許出願人は将来、特許権者の地位を獲得する者です

特許出願人は、その発明について、特許権の設定登録がされたときに、特許権者となる者のことです。

特許出願人となるための要件はただ一つです。

その発明について、特許を受ける権利を有するか

特許を受ける権利を有さない者が特許出願を行った場合、その発明について、特許を受けることはできません。

審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
 1号~6号 省略
7 その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。

このため、特許権が欲しい発明がある場合、
発明者であれば、そのまま特許出願をしても問題ありませんが、
別の方が発明者の場合は、特許を受ける権利の譲渡を受けた後に、特許出願を行う必要があります。

AIを用いて発明を完成させたときでも、実際は特許を受けることは可能でしょう

特許を受ける権利は発明者に帰属します。

つまり、
自然人である発明者が発明を完成させることができることが前提
現在の特許制度が構成されています。

現在のAI生成物は、その技術的制約から進歩性を満たす発明を創作することは困難と考えますが、
偶発的に進歩性を満たす発明が生成されることも有りえます。

この場合に、特許を受けることができるかについては、
正直微妙な見解を取らざるを得ません。

法律上、自然人である発明者が発明を完成させるところ、
生成AIは自然人ではありませんので、特許を受ける権利は発生せず、
特許出願を行っても、特許されない
と考えるのが自然です。

しかし、発明者の確認を特許庁が行っているかと言いますと、
ほとんどノーチェック(確認の術がない)ことから、
適当な方を発明者に据えて特許出願を行った場合、特許される可能性は高い
と考えます。

職務発明の場合、会社は基本的に自由に発明を実施できます

職務発明の場合、
会社は、基本的に、その発明について通常実施権を有することが
法律上の建前として規定されています。

これは、特許を受ける権利が発明者に最初に与えられることからこのような建付けになっています。

とはいっても、会社にとっては、単なる通常実施権では都合が悪いのも事実です。

会社が特許出願をしようとするとなると、
交渉により、
職務発明についての特許を受ける権利を譲渡してもらう
ことが必要となるからです。

そこで、
職務発明規定を整備し、
あらかじめ、職務発明について、特許を受ける権利を会社に帰属させることを明記していれば、
職務発明について、会社に特許を受ける権利を与えることができます。

ただし、この場合、
発明者である従業員に、相当の利益を支払う必要がある点に
注意が必要です。

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