知的財産

知的財産制度がなぜ存在するのか?-知財入門講座(1)

ビジネスを進めていく上で、特に重要なことは、経営法務の知識をしっかりと押さえておくことです。

法的リスク、すなわち、ビジネスの中断リスクを低減させるためにも、経営法務の知識は特に重要となってきます。

その中でも、特に重要なものが、知的財産権に関するものです。

すべてのビジネスにおいて、知的財産権の取り扱いは忘れてはいけないものです。

しかし、知的財産権制度は小難しい話ばかりで苦手という方も多くいます。

今回から始まりました「知財入門講座シリーズ」

第1回は、知的財産権制度がなぜ存在するのか、その理由と、ビジネスを進めるにあたり、知的財産権制度の知識を押さえておくべき理由について解説していきます。

知的財産権を簡単に解説!

特許庁では、知的財産権を次のように解説しています。

知的財産権制度とは、知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度です。
(2023年度知的財産権制度入門テキスト 9ページ)

例えば、研究開発を通じて完成させた技術的アイデアや、美的創作を通じて完成させたデザインイラスト音楽、営業活動を通じて得られた顧客データブランドの信用など。

これらを財産的な価値があるものとして、保護するための制度。

それが知的財産権制度ということになります。

知的財産権の種類と特徴については、次のページ(知財入門講座第2回)にて解説します。

知的財産権制度が存在する理由

知的財産権制度が存在する理由
それは、知的財産権制度で保護しようとしているものすべてが情報であるが故に抱える問題があるからです。

知的財産権は「情報」を保護している

先ほど解説したとおり、知的財産権は、研究開発を通じて完成させた技術的アイデアや、美的創作を通じて完成させたデザインやイラスト、音楽、営業活動を通じて得られた顧客データやブランドの信用などを、財産的な価値があるものとして保護するためのものです。

技術的アイデアは、新しい技術についてのアイデアです。アイデアは頭の中にある情報です。

新しい商品やサービスは、そのアイデアを目に見える形に変換したものということがいえます。

デザインや、イラスト、音楽も、重要なものはそれらの情報です。

この情報を使って、紙にイラスト画や楽譜として、また電子媒体として、第三者に伝達することができるようになります。

知的財産権制度は、イラスト画、楽譜という物理媒体を保護するのではなく、そこに記載されている(示されている)情報を保護するものです。

「情報」であるが故に抱える問題とは?

「情報」は、次の3つの特徴を有しています。

  • 残存性
  • 複製性
  • 伝搬性

残存性は、使っても無くならないという性質です。

りんごを食べるとなくなります。

しかし、「りんごは赤い」という情報を使ったとしても、その情報が無くなったりすることはありませんよね。

複製性は、簡単に複製(コピペ)できるという性質です。

内部構造が複雑な電子機器であっても、電子機器の内部構造に関する設計データがあれば、エンジニアであれば簡単に複製できます。

伝搬性は、すぐに人々に情報が拡散されるということです。

アメリカにあるものを日本に持ってくるとなると、飛行機か船で運ばないといけませんが、情報は、電子メールやファイル共有ソフトなどで簡単に送受信できますよね。

このような「情報」の性質を有していることから、
知的財産権で保護しようとする情報を多くのものが同時に使用することができます。

一昔前であれば、情報を活用する術が少なく、情報に対する価値は、それほど高いとはいえませんでした。

しかし、現在では、情報に対する価値は格段に上がってきています。

このような状況下で、創作した情報に対して、創作した者に独占的な権利を与えなければ、知的創造活動を活性化させようとする者が少なくなり、産業を発展させることが難しくなります。

また、現在では、情報を有することにより、他社との差別化を図ることを戦略の一つとして考えることをベースに経営戦略を立てたりしますが、
情報を適切に保護できなければ、差別化を図ることも難しくなります。

このため、創作した情報に対して、創作した者に、独占的な権利を与える知的財産権制度が確立されているということです。

ビジネスを進めるにあたり知的財産権制度の知識を押さえておくべき理由

ビジネスを進めるにあたり知的財産権制度の知識を押さえておくべき理由
それは、知的財産権に、独占的な権利と排他的な権利を与えているからです。

ビジネスの世界では契約が基本的な考え

当たり前ですが、
ビジネスの世界では、「契約」を締結し、履行することを前提とします。

契約は、法律に違反したり、公序良俗に反するものでなければ、内容を自由に決めることができます。

例えば、客に水道水をコップ1杯800円で売る契約を締結した場合、その契約内容に客が理解し、納得していて契約を結んでいれば、その契約は有効となります。

炎上案件にはなるとは思いますが、契約法の世界は、なんら問題はないことになります。

契約は、契約を締結する当事者間でのみ権利と義務が発生し、第三者に対しては、原則、権利や義務は発生しません。

知的財産権には、財産を独占し他人を排除することができる力がある

契約だけの世界では、仮に新しい知的財産を取得した場合、その権利を止めさせるためには、「契約」が必要となります。

そして、契約は、第三者に対しては、効力が発生しないため、獲得した知的財産に対して、独占することはできません。

知的財産権制度では、知的財産権を取得すると、権利を取得した者は、その権利の内容にしたがって、知的財産を独占することができます。

独占することができるということは、無断で、知的財産を使用する者がいた場合には、
その者に対して、その行為を止めさせたり、損害が生じている場合には、損害賠償を求めたりすることができます。

つまり、
知的財産権を取得した場合には、事業を独占することができますが、
知的財産権を取得された場合には、最悪、事業を中止しなければならない事態に陥ることがある
ということです。

これが、ビジネスを進めるにあたり、知的財産権制度を知識として押さえておくべき理由となります。

知的財産権制度に関するご相談は弁理士にきくのがBEST

知的財産権制度は複雑な制度であり、専門的な知識が必要となります。

特許庁や文部科学省などのウェブサイトでは、知的財産権制度に関する情報が提供されていますが、個別の案件について具体的なアドバイスを受けることはできません。

そこで、知的財産権に関するご相談は、弁理士に相談することをおすすめします。

弁理士は、知的財産に関する専門家として、特許出願や商標登録などの手続きを代理で行うことができる国家資格者です。

また、弁理士は、企業や個人に対して、知的財産権に関するコンサルティング業務も行っています。

知的財産権に関するご相談は、お気軽に弁理士にご相談ください。

  • 専門家のアドバイスを受けられる
  • 手続きをスムーズに進められる
  • 権利侵害のリスクを回避できる
  • 事業戦略の策定に役立てられる

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